とある師匠の話です。
この方は今も現役でバリバリ漫才をやられている方で、私自身とても尊敬する師匠のお一人です。
私が漫談をやっている時も、袖でその様子を見て下さり…終わると色んなアドバイスをして頂いたり、ネタを頂いたり、本当に応援して下さっています。
ある時、この師匠と楽屋でお話させて頂いていた時のことです。
その師匠曰く…「最近、若い時のように言葉がすっと出て来ないんだ」と、少し落ち込み気味な感じで話して下さいました。
楽屋で雑談をさせて頂いているレベルで言うなら、そんなことは全く感じなく…むしろ老いて尚盛んと言いますか、その辺の若手なんか足元にも及ばないくらい、機転が効く面白さは変わらず。
心からそう思っているので、私は即座に否定しました。
「全く感じませんよ!全然大乗だと思いますよ!」と。
ところが、ここ数年、ガクッとそのスピードというか、話芸における筋力が落ちたと感じてらっしゃるそうなんです。
ここ数年…そうです、コロナです。
2020年2月以降、約3年もの間…コロナ禍により、対面で喋るお仕事が激減してしまいました。
少しずつ共生するフェーズへと移行して行ったことにより、なだらかながら回復傾向に進み始め、ようやくここ半年くらいでコロナ前に近い感じに戻って来ましたが、ここまでの3年に及ぶ停滞期間は、芸人にとってただ単に“仕事が無くなる→収入が減る”ということ以外の悪しき影響を受けることとなりました。
それが…喋る力の衰え。
この点については、私自身非常に危機感を覚えた時期でして…特に初めての緊急事態宣言になり、仕事がほぼゼロになってしまった期間、強い危機感を覚えました。
お喋りの仕事って、やってないと急激に衰えるんです。
幸いにして私は事務所からネット配信のMCのお仕事や配信アプリのご提案を頂きまして、喋る機会が無くなることなくここまで来れているのですが…ご高齢になると、さすがにそこでご自宅で配信とか、さすがに障壁が高いですし、そのまま家に閉じ籠もることが多くなったんじゃないかと思うのです。
身近な師匠方を見ていて、この状況こそ衰えへの第一歩だと思いました。
だから身近にいらっしゃったこいる師匠には少しでも多く人前で喋る機会を作ろうと思いましたし、それは他の師匠方に対しても同じく。
活躍の場がないことこそ、衰えるきっかけになってしまうという現実。
我々次の世代は、その辺りを対岸の火事と思わず、色々考えて行かなければならないと思うのです。。。
2023年10月12日