なだらかな坂のように気持ち下っている廊下(これは老朽化により傾いている訳ではありません、悪しからず)を進むと3段くらいの階段があり、その手前で靴を脱ぐ。
無数に並べられた便所サンダルの1つに足を入れ、本格的な“ミステリーゾーン”へと突入です。
階段を上がったその場所は、舞台袖。
薄暗い舞台袖のその先には2人の若い漫才師が声を張り上げ、丁々発止のやりとりを繰り広げている。
その合間に聞こえるべき、笑い声が…全く聞こえて来ない。
〔これはエラいところに足を踏み入れてしまったかもしれない〕
…一瞬、そう思いました。
いや、まぁ、かくいう自分だって百発百中で笑いを取れるような人間ではないし、その若い漫才師さんのことをどうこう言える立場でもないことは百も承知です。
ただ、不愛想な受付のお爺さん、舞台上から感じる雰囲気、そして何より薄暗く何処か陰鬱な空気に支配されている舞台袖…〔これは何か新たなものが産まれる場所ではないな〕…何だかとても重い気持ちになったのを今でも覚えています。
そして袖を抜け、突き当りを曲がると楽屋があります。
そこには(私の勉強不足ですが)見たことのない漫才師の方々が楽屋に鎮座していたのです。
変なステッチの入った、目に眩しい色合いのダブルのスーツを着た師匠がいらっしゃって、初めてお会いする、そして初めて知るその漫才師の方々に挨拶を繰り返す私。
〔何じゃこりゃ〕
今振り返れば、自分のこと棚に上げてよく言うよ、という感じなんですが…あたかもアングラ映画の導入に出て来そうな光景に、私は強く決意したことがあります。
〔この場に決して馴染んではならない!〕
…それは今思えば、若気の至りであり、大きな勘違いの始まりだったのでした。。。
2023年07月08日