れらpです。
先週のことですが(7月6日の朝)、驚くべき第一報を目にしました。
『ガンダム ハリウッドで実写化』
アメリカの「レジェンダリー・ピクチャーズ」は7月6日、アニメ会社「サンライズ」と共同で「機動戦士ガンダム」を実写映画化することを発表した。ロサンゼルスで開催中のアニメ・エクスポで発表された。 ハリウッド・レポーターが報じた。
これまで、テレビアニメやマンガ、アニメ映画など、様々な媒体で人気を集めてきた国民的人気アニメ「機動戦士ガンダム」だが、実写映画化されるのは今回が初めて。
レジェンダリー・ピクチャーズは、『パシフィック・リム』『GODZILLA ゴジラ』などの制作を手がけている。『パシフィック・リム:アップライジング』のプロデューサー、ケイル・ボイターが企画を指揮する。
(引用:https://www.huffingtonpost.jp/2018/07/05/gundam_a_23475807/)
★こちらがガンダム製作元のサンライズが発表したプレスリリース動画です★
Sunrise_Panel_Gundam_Long_2018AX
これには正直驚きました。
ついに「来るべきものがきたか」というポジティブな感慨と「悪い予感しかしない」というネガティブな不安とが、激しく心の中で渦巻く事態に笑
まぁアニメに興味のない方にとっては、ガンダムが実写化されようがどうなろうが、どうでもいい話だとは思いますが。
しかし一方で『ガンダム』は、日本アニメを代表するコンテンツ。
世界中に途轍もないファン数を抱える"キング・オブ・キラーコンテンツ"です。
普段アニメに興味がなくとも『サザエさん』や『ドラえもん』と同じくらい多くの人が『ガンダム』という名前くらいは知っているでしょう。
それが<実写化される(しかもハリウッドで)>ということが、どれだけ大きなインパクトを世界中に与えるか?
そしてそもそも、この<アニメ作品の実写化>という行為が、今までどれだけの作品ファンを失望させてきたか?
今回のエントリーは、そのあたりを踏まえながら「なぜアニメ実写化は支持されないのに量産されるのか!?」について考察してみたいと思います。
■「駄作」の烙印を押されたアニメ実写化作品は枚挙にいとまがない
そもそも<アニメの実写化>は非常に難易度の高い事業だ、と言われています。
過去の作品も、相当数が「駄作」として世間から散々こき下ろされ、その屍を晒してきました。
代表的な失敗作として挙げられるのが『デビルマン』(2004年/東映)。
この作品は、"世紀の大失敗作"あるいは"事故物件"とも呼ばれ、かの高名な映画評論家・前田有一氏から100点満点中「2点」という、もはや誰も抜き去ることのできない(?)得点をもぎ取り、今やレジェンドと化しています。
他にも"炎上案件"として記憶に新しいところでは『進撃の巨人 ATTACK ON TITAN』(2015年/東宝)や『テラフォーマーズ』(2016年/ワーナーブラザース)などが挙げられるでしょう。
★レジェンド(笑)『デビルマン』予告編★
Devilman - Live Action - Trailer (2004)
▼どれだけ酷評されたか(笑)はこちらをご覧ください
ここまで叩かれまくると、一週回って逆に観てみたくなる、というのが人情というものですが、そう思ってつい先日『進撃の巨人』を試しに観てみたところ、予想通りというか、予想以上に"大惨事"でした笑
あまりに凄かったので、機会があればこのブログでも別途レビューを上げてみようと思います笑
さて、そんな感じで今や<アニメの実写化はクソ>というのが世間一般の定説となっています。
"ガンダムの実写化"に僕がとてつもない不安を憶えたのも、今やそういう社会通念があるためです。
ところが…!
よく調べてみると、意外にも「アニメ実写化映画」というジャンルは<興行的には割と成功している>という事実が判明したのです。
■統計的にはアニメ実写化が映画ビジネスとしてそこそこ成功しているという意外な事実
こちらの表をご覧ください。
これは、レジェンド(笑)『デビルマン』以降、現在に至るまでの邦画業界における主なアニメ実写化作品の一覧です。
本当は他にもたくさんあるのですが、いわゆる"キラキラ系(青春モノ・恋愛モノ)"は敢えて除外しました。
日常生活が舞台となる作品だと、製作費が数千万~せいぜい1億2億くらいなので、事業としての「成功/失敗」が分かりにくいからです。
というわけで、ここでは主にSFとか異世界モノ、宇宙モノ、バトルモノなど、いかにもアニメらしい派手な世界観の作品を中心に僕の独断でリストアップしています。
これら"非現実な"作品は、舞台設定から何から映像を作り込まなければいけないので、当然製作費もかなり掛かってくるわけです。いわゆる「ハイリスク・ハイリターン」作品群、とでも言えるでしょうか。
興行収入金額は「一般社団法人日本映画製作者連盟(日映連)」の発表資料に基づいています。ただし、この団体<興収10億円以上>のものしか公表していません。
それ以下の興収金額の記載根拠は、当時の各種報道によります。
分かる範囲で「製作費」も記載してみました。ただこれに関しては通常<非公開>ですので、公開当時『製作費〇〇億円!』などと配給会社自身がカミングアウトしちゃってるもの、もしくは当時の関係者インタビューなどで金額が示唆されたものについてのみ、言い値をそのまま記載してあります(→なので不明な作品が多いのはご了承を)。
そのあたり推測の域を出ない部分もありますが、その前提でこの表をご覧ください。
実は興行的に大コケしている作品、意外にもそんなにないってことが分かります。
■「興収10億円で大ヒット」の邦画界でアニメ実写化の製作費アベレージは20億
一般的に邦画の世界では「10億円で大ヒット」なんだそうです。
だから日映連の公表ラインも10億円なんでしょうかね。
ハリウッドのそれは100億円と言われていますから、桁がひとつ小さいです。まぁ世界を相手に商売しているハリウッドと、国内市場しかない邦画を比べるのもなんですが、日映連の公表作品=「興行的に成功」した作品、とみても間違いではないかもしれません。
さて邦画業界、ずいぶん前から「製作委員会方式」で映画を作っています。ハリウッドみたいに、ひとつのフィルムメーカーだけで巨額の資金を調達することができないので、複数の企業が集まってお金を出し合い、リスクを分散する、という方式です。当然、儲かったら山分けする。
ただ、ビジネスの世界ですから、儲からない事業に継続的に投資する企業なんてどこにもありません。
1,000万出したら、1年後には最低でも1,200万くらいは戻ってこないと割に合わない。
<10億円で大ヒット>だとすると、普通の感覚であれば「出資した額の倍返し」くらいが当てはまるでしょうか。
1,000万投資して、1年後に2,000万返ってくれば、次も張り切って投資しよう、ということになる。
てことは、興収10億円の大ヒット作品は、だいたい半分の5億円かそれ以下くらいの製作費で作られてるのかなと推察できます。
その点、このリストでも分かる通り、アニメ実写化作品の製作費は公表されているだけでも20億円レベルがアベレージのようです。
製作費非公表の作品も、20億映画と同じくらいの作品規模感ですから、最低でも3~5億、アベレージ10億円くらいはフツーに掛かっている、と見てもよいかもしれません。
この額、邦画界では当然"超大作"と見做されます。
※ちなみに、NHK大河ドラマの制作費が1話あたりおおよそ1億円だそうです。年間約50本ありますから、大河の総製作費は1シリーズでだいたい50億円程度。恐竜モノみたいなCGを多用する『NHKスペシャル』だと1本4~5億円は下らないそうです。それらと比較してこれら邦画の製作費が果たして高いのか安いのか?
※『ゲームオブスローンズ』(米・HBO製作)という人気海外ドラマとかになると、1話(60分前後)あたり約10億円。1シリーズ12話で約200億円くらいかけているそうですから、その辺と比べると最初から勝負になりませんが…。
■儲かってるから実写化が止まらない
あらためてリストを俯瞰してみましょう。
全21作品のうち、およそ7割を超える15作品が興収10億円を上回っている。
製作費が10億以下であれば、当然収支はプラスとなります。
ただ、製作費非公表の中には、実際には10億円以上を投じている超大作もあるかもしれませんので、確実を期してこの中からさらに<興収20億円>を超えた作品だけフォーカスすると、該当作は10作品。
すなわち、手堅く見ておよそ半数(約5割)の作品が<興行として十分すぎるほど採算が取れた>、と見做せるでしょう。
こうしてみると『デビルマン』で大コケした東映さんだけはこれに懲りたのか、その後アニメ実写化に手を出していませんが、『ガッチャマン』で火だるまになった東宝さんはその他の作品で十分投資額を回収していることが分かりますし、『テラフォーマーズ』という黒歴史を作ったワーナーブラザース(WB)さんはもともと『るろうに剣心』シリーズという超ヒット作で財を築いていたことが分かります。
「映画」という、蓋を開けてみないと成功するかどうか分からない、半ば博打みたいな事業において、この<大成功5割>、少なくとも損はしていないのが<7割以上>、というのは極めて高い事業成功率ではないか、と思うわけです。
そもそも昨今の映画ビジネスの収益構造は、一次販売の興行収入だけに頼っているわけではありません。公開終了後は、地上波テレビやBS/CATV、セル/レンタルビデオ販売やVODへの二次展開、いわゆる<マルチユース>での復活戦が待っています。去年(平成29年7月)総務省情報通信政策研究所が発表した「メディア・ソフトの制作及び流通の実態に関する調査結果の概要」によると、映画コンテンツの市場規模としては一次販売が7,368億円に対してマルチユースが5,197億円という結果が出ており、単純計算で興収額の約70%を二次利用でさらに補完できている可能性がある。つまり、本業(興行)で少し足りなくとも、その後の二次展開でなんとか息をつく、という構造が出来上がっている。
「実写化」が発表されるたびに、アニメファンを中心に「止めてくれ」という悲鳴が上がりますが、映画会社が懲りずにアニメ実写化を推し進める理由がここにありました。
■ではなぜアニメ実写化は世間から「失敗」と見做されるのか!?
『進撃の巨人』を例に考えてみましょう。
この作品は、表の通り、少なくとも<興行としては成功>だったことが分かります。前後編合わせて約40億円(推定)の製作費に対し、興収は49.3億円。当然これ以外にも各種グッズ販売やブルーレイなどの売り上げ、VODなどへの2次販売も加味されますから、ビジネスとしては十分元を取ったことと思われます。
ところが、作品そのものへの評価は極めて低い。
例えば前述の前田有一氏のレビュー「超映画批評」では前編が100点満点中40点、後編が同30点。
「Yahoo映画」の星評価では5点満点中2.2点。
映画レビューといえば外せない「映画.com」レビューが同じく2.6点。
僕の個人的経験上、これらの星評価で3点を下回る作品は、本当に駄作である可能性が限りなく高い(笑)
実際、僕もこの作品前後編ともにVODで一気見してみましたが、本当にビックリするぐらい最低のB級映画でした。いや、それじゃあ世の中のB級映画に失礼か笑
映画『進撃の巨人 ATTACK ON TITAN』プロモーション映像
じゃあなんでそんな"超駄作"に皆さんお金払ったんだろう?と思うわけですが、そのヒントになるのが幸か不幸かこの作品<前後編の二部作>だったこと。
再度この表をご覧いただきたいのですが、前編の興収が32.5億円だったのに対して、後編は16.8億円。つまり<ほぼ半減>している。
物語が完結していないのに、前編を観に行った人の約半数が「後編はもう見なくていいや」と鑑賞を打ち切ったわけです。
ということは、本来の作品的な評価はこっちの後編16.8億円を基準に考えなきゃいけない。
すなわち後編の興収×2=33.6億円。これが本来の『進撃…』の評価額です。
推定40億円の製作費を考えると完全な赤字ですね。
つまり『進撃の巨人』という実写作品は、前編で世の中の期待を背負って稼ぎまくったが、後編でファンから見放されて大失速しかろうじて首の皮一枚繋がった、という図式だったことが分かります。
比較のため、アニメ実写化としては異例の大成功だったと言われる『るろうに剣心』シリーズの実績も見てみましょう。
この作品は全三部作。公平を期すためにこちらも前田有一氏の評価を確認すると、第一作が100点満点中55点、第二作(京都大火編)が同65点、第三作(伝説の最期編)が同75点と、尻上がりに評価を上げていることが分かります。
第一作のYahoo評価が3.7点、映画.comは3.5点。第二作はYahooが3.7点、映画.comが3.8点。第三作はYahoo3.3点、映画.com3.6点。作品評価としてはいずれも『進撃…』を大きく上回っている。
そして興収は第一作が30.1億円、第二作が52.2億円、第三作が43.5億円。製作費は第一作だけ公表されていて、約20億円ということですから、三作いずれも同程度と考えると、総製作費60億円(推定)に対して総興収は125.8億円(!)
これがどれだけ凄い額かっていうと、2017年の国内映画興行収入ランキング1位が『美女と野獣』で124億円ですから、(3作合計額ではありますが)それを上回るくらいの数字だ、とご理解ください。
こういう、尻上がりに興収を上げていく作品というのは、明らかに<観客が作品に満足>して次作のリピーターになっているのと同時に、当初は興味関心のなかった層にすら影響を与えて観客数を押し上げている、ということが分かります。
『るろうに剣心 京都大火編』『るろうに剣心 伝説の最期編』本予告編
僕もこの作品観ましたが、『進撃…』とは違って、かなり楽しめました。
もちろん評価には個人の主観が入りますので、読者の皆さんの中には、同じようにこの『るろ剣』をご覧になって、大して面白くなかった、とお感じになった方もいらっしゃるとは思いますが、少なくとも『進撃…』のような"作品としての破綻"はなかった。
舞台設定は時代劇ですが、時代劇らしからぬスピード感、分かりやすい勧善懲悪設定、ヒロイックなストーリー展開、アニメ原作ならではの派手な舞台設定などなど、娯楽作品として十分観客を魅了する作品でした。
言い換えれば、『るろうに剣心』は作品として評価されたからこその興行成績であり、『進撃の巨人』は興収こそペイできたものの、作品としては失敗作だった、ということになります。
そして世間の評価も、一般的には『るろ剣』は成功、『進撃…』は失敗、とされています。
すなわち<アニメ実写化>の評価軸は「興行収入」ではなく「作品そのものへの評価」で決まる、という定義ができます。
ということであらためて、こちらの各作品の評価を一覧にした表をご覧いただきましょう。
映画評論家の前田有一氏、Yahoo映画レビュー、映画.comレビューの3種類の評価を並べたものです。
こうしてみると、及第点(100点満点であれば60点、5点星評価であれば3以上)を超えた作品というのは、
前田氏>18作品中6作品(約33%)
Yahoo映画>21作品中10作品(約48%)
映画.com>21作品中9作品(約43%)
となります。
すなわち半数以下。一番甘いYahoo映画ですら5割を切り、辛口評論の前田氏に至っては3割少ししかない。3種評価の平均値を取れば<世間から評価された作品>は全体の4割ほどしかない、ということになります。
興行的に成功した作品が7割オーバーなのに対し、作品として評価されたのが4割少し。
この3割の「差」が、<映画製作サイド>と<観客>との、まさに温度差となって「世間の苛立ち」の原因となっていることが分かります。
■実写化ガンダムの成功には何が必要か
もう一度整理すると、映画製作サイドに立った場合、成功と見做されたのが7割強。
これに対しファンサイドに立った場合、満足した作品は4割強。
その差3割が<映画製作サイドとファンとの間の絶対に埋められない溝>となって、両者のすれ違いを顕在化させています。
誰しも、自分が好きなモノを冒涜されると腹が立ちます。
これは人間本来の主観的感情なので、特に客観的データは必要ありませんね。
あらためて、この<3割の差>というのがどういう意味を持つかということを考えてみましょう。
そもそもアニメ実写化作品を支える"基礎票"は、その作品本来のアニメファンです。だから映画会社も、実写化の対象としているのはこれら基礎票(=作品シンパ)が大きく見込める<アニメとして大ヒットした作品>だ。
『進撃…』の場合も、そもそも原作漫画が大ヒットして、現在までに売り上げた単行本は累計7千万部以上。
アニメ(第1期・第2期)も原作の世界観を忠実に再現して手堅く大ヒットした。
そういう意味では、実写化前編は、それら多くのファンたちが期待に胸を膨らませ、大挙して映画館に足を運んだことが推し量れます。そのあたりの動員予測は製作サイドとしても当初から十分期待したはずです。
ところが蓋を開けてみたら肝心の作品評価はボロボロで、それが後編の興収半減となって直撃した。
言ってみれば、この3割の客は「金をドブに捨てた」「裏切られた」「失望させられた」などと考えている"満足できなかった人たち"あるいは"強い不満を持った人たち"ということになります。
彼らは当然、ツイッター等で作品に対し遠慮なく批判を繰り広げます。
昨今の世論というのは、こうしたSNSでの"口コミ"が大きな影響を与えますから、実写化作品全体のおよそ6割がこうした世論によって「駄作」の烙印を押されれば、社会全体のムードとして<アニメの実写化はロクでもない>イコール「失敗だ」という空気が蔓延するわけです。
それどころか、実写化作品へのネガティブ評価は、本来の作品そのもののイメージをも貶めることになります。そのポンコツぶりのせいで、実写版で初めて『進撃…』に触れた人は当然「なんだ、進撃の巨人ってこんなつまんない作品だったのか」と勘違いするでしょう。
となると、実写版『ガンダム』が評価されるためには、興行収入の黒字化よりもなによりも、絶対的に"作品内容"それ自体で評価されなければならない。
普通に考えたら、ガンダムの実写版、ファンなら一度は観てみたいと思うはずです。
お台場に立った"原寸大ガンダム"は多くの人が一目見ようと押し掛けました。
引用元:[拡大画像]実物大ユニコーンガンダム、お台場に立つ。変身・発光でさらに迫力アップ(1/23) - AV Watch Watch
それと同じ現象が映画公開時にも必ず起こるはずで、ガチの"ガンオタ"はもちろん、普段アニメは観ないけど、実写なら少し興味ある、というライトファン層もたくさん見に来るでしょう。かくいう僕も、実写版ガンダム、ぜひ劇場で観てみたい。
だから興行的にはほぼ間違いなく成功するでしょう。問題は作品そのものへの評価だ。
『るろ剣』のように、作品への評価が高ければ、第2作、第3作とこの先どんどん製作されていくことでしょうし、売れると分かったら作品への出資もどんどん増え、結果的にさらに高品質な作品が創られていくことになるはずだ。
しかし「駄作」の烙印を押されたが最後、実写化は二度と行われないでしょうし、下手したらガンダムという作品そのもののイメージを損なう危険性すらある。まさに大惨敗『テラフォーマーズ』がやらかした失敗です。
そういう意味で、ガンダムが<ハリウッドで実写化される>というのは、ひとつの安心材料ではあります。少なくとも今地球上で最も映像表現のクオリティが高いわけですから。
逆にハリウッド製作で一番リスキーなのは、<ガンダム独特の世界観が原作に忠実に再現されるかどうか?>にある、と僕は思います。
■失敗の原因の多くは「コレジャナイ感」
たいていの場合、ファンが失望する最大の原因は「コレジャナイ感」です。
アニメベース(漫画原作も含め)の作品というのは、ビジュアルにせよ世界観にせよストーリー展開にせよ、完成された<答え>が既にある。
あるいは原作ファンが絶対に見たいエピソードとか、"あのシーン""あのセリフ"みたいなものが存在するわけです。
ファンからすれば、"それがあるからこそ好き"レベルの重要なファクターだ。
それを「(ファンからすれば)ポッと出の」どこの誰だか分からない監督が、勝手に"改竄"し"台無し"にしてしまう。下手すると、根本的な舞台設定すら変えてしまう。
その要素をなくす、とかその設定を変える、というのは、いわばファンにとっての<思い出を消す>あるいは<思い入れを否定する>ことに他ならないわけです。
だからこういう作品のことを俗に<原作レイプ>と呼ぶ。
現に、評価の低い実写化作品はことごとくこの<原作レイプ>を行っている。
前田氏から最低点を叩き出した『デビルマン』に次ぐビックリ低評価作品として挙げられる『ルパン三世』(100点満点中3点)、『ガッチャマン』(同4点)、『テラフォーマーズ』(同5点)それぞれの氏のレビューにはこう書かれています。
『ルパン三世』3点
「(前略)…どの角度から見てもこれじゃない感満載の、よくぞここまで人はおかしなものを作れるものだと感心させられる驚愕の一本である。…(中略)…14年版「ルパン三世」には…「ルパンらしさ」がほとんどない。センスのない人たちに大予算を与えると、かくもすごい作品が出来上がる。そんな見本といえるだろう。」
(全文はこちら 超映画批評「ルパン三世」3点(100点満点中))
『ガッチャマン』4点
「(前略)…それにしても、この映画は年度を代表するエンターテイメント大作のはずである。冗談ならともかく、真面目に作ってこんな風になってしまうのなら、映画会社の製作システムのどこかに重大な問題があるように思えてならない。中小企業診断士なのかマッキンゼーなのか、誰が適切かは知らないが、一度外部のチェックが必要なのではないかと思わず頭を抱えてしまう。」
(全文はこちら 超映画批評「ガッチャマン」4点(100点満点中))
『テラフォーマーズ』5点
「(前略)…そうした原作の魅力は今更いうまでもないわけだが、この実写版映画には一つもない。完全に原作の読み込み不足、リサーチ不足である。
原作ファンが見ればわかると思うが、映画版はいくつかの設定や展開を変えており、その変更部分がことごとく大きな改悪となっている。いったいなぜそんな事をしたのか、小一時間問い詰めたい気分になること確実である。…(中略)…ほかにも色々指摘したいところはあるが、あまり長すぎるのもよろしくないのでこの辺で終わりにする。いずれにせよ、実写版「テラフォーマーズ」は、長年私が指摘してきた邦画の問題点が凝縮されたような映画である。
あまりに原作破壊っぷりがいきすぎて、腹も立たないほどではあるが、そんなわけで原作ファンは覚悟の上で出かけることをオススメする。」
(全文はこちら 超映画批評「テラフォーマーズ」5点(100点満点中))
最後の『テラフォーマーズ』のレビュー記事本文は、他の記事より相当ボリュームがあります。前田氏、相当腹に据えかねた感じですね笑
さて、これらのレビューに共通しているのは<原作が本来持っていた魅力の棄損>です。
裏を返せば、高い評価を得た作品というのは、ことごとくこの<原作の魅力>を大切にしている。
ということは、実写版『ガンダム』にとって最重要なのはやはり<原作世界観の踏襲>ということになります。
■果たしてハリウッドに"ガンオタ"はいるのか!?
どんな作品であれ、その作品の肝、というか「売り」、"一番の押さえどころ"を知っているのは熱烈なファンである。日本風に言えば<オタク>、ガンダムに限って言えば<ガンオタ(ガノタ)>だ。
日本人監督でさえ、進撃の巨人、あるいはルパンやガッチャマンやテラフォーマーズの<ツボ>を押さえることができなかった。
というか、正直言ってこれら作品の監督たちには、原作に対する愛、というかリスペクトがほとんど感じられなかった。1回通して全部観たのかさえ覚束ない実写版の頓珍漢ぶりだったわけですから。
外国人監督になるであろう実写版『ガンダム』でコレをやられると、本当にどうしようもない「超駄作」が生まれること請け合いです。
したがって今回実写版ガンダムを手掛けるレジェンダリー・ピクチャーズには、ぜひとも筋金入りのガノタを製作チーム入りさせることをお勧めしたい。
原作へのリスペクトに欠ける代表例をひとつ挙げてみましょう。
今回のリストの中に『SPACE BATTLESHIP ヤマト』という作品があります。
ご想像の通りこれはアニメ『宇宙戦艦ヤマト』の実写版で、木村拓哉さんが主人公。
興行的には成功したが、作品的には駄作と呼ばれてしまった典型的な実写化失敗作です。
★全体的な雰囲気はすっごく良かったわけですよ(泣)★
この作品の何がダメだったのかというと、どう考えてもそれは宿敵<ガミラス>が何だか変な液体ミュータントみたいな謎の宇宙生命体化してしまったこと。
本来の『ヤマト』は、地球を滅亡に追いやる<ガミラス星人>という宿敵が、肌の色こそ違えど地球人と酷似したヒト型生命体で、同じように思考し、同じように戦い、同じように死んでいく、というところにこそ魅力があった。
人々はそこに、かつて太平洋戦争で無念にも敗れた日本と、強敵だった米英との姿を重ね合わせ、ヤマトの活躍ぶりに胸躍らせたり、敵ながら天晴、的なエピソードに感じ入ったりしたわけです。
だから実写版冒頭での、火星宙域における地球連邦軍日本艦隊とガミラス艦隊との大激戦シーンには度肝を抜かれたし、艦内から酸素が流出して優秀な兵士たちが酸欠でもがき苦しみながら絶命する場面では「宇宙での戦いとはかくも厳しいのか」とそのリアリティに震えたものです。
でも……ガミラス人が変な液体ミュータントとして登場してしまった時点ですべてが台無しになったのです。こんな異形の敵には誰も感情移入できないし、原作にあった<地球人とガミラス人との、意地と意地とのぶつかり合い>的なドラマツルギーがすべて喪失してしまった。
どんなに古代進がDQNでも、大和撫子代表だったはずの森雪がイラ子に変わり果ててしまっても、ブラックタイガー隊の質実剛健なはずの加藤飛行隊長がその辺のチャラ男化していても、なんとかヤマトの世界観を脳内補完して観ていた観客は、ついにここで力尽き、絶命します笑
★さすがの貫禄!アニメ版は何回見ても傑作ですね★
原作に愛がないと、こういうことを平気でやってしまうのが<アニメの実写化スキーム>、なんだと思います。
どうせガミラス軍を再現できるだけの人材と予算がなかったのでしょう。
普通に考えればガミラス人が日本人では務まらないし(原作のイメージはナチスドイツですからね)、好敵手たるデスラー総統に至っては、僕のイメージだと米国人俳優のエド・ハリス(映画『スターリングラード』で惚れ惚れするような男の色気溢れるドイツ高級将校を演じました)あたりなんですが、彼が日本のアニメ実写化作品に出演してくれるとは到底思えない笑
まぁそんな感じでどんどん理想から離れていって、ついにはポンコツ化した、というお話。
ハリウッドは?
少なくともガンダムは、単なる巨大ロボットものアニメではありません。
よく知らない人たちには誤解されがちですが、ガンダムはそれそのものが物語の主役ではなく、あくまで<兵器の一種>にしか過ぎません。戦争の道具として、戦闘機があり、戦車があり、宇宙戦闘艦があり、そしてモビルスーツがある。
物語の核心はあくまで<人>であり、連邦やジオンの人々の<生きざま>であり、その中にこそ、我々を惹きつけてやまない数々のエピソードやシーンがある。
たとえハリウッド版実写ガンダムがオリジナルストーリーになるにせよ、そういった<空気感>みたいなものさえあれば、人々は受け入れると思うのですが、果たして…!?
これら<ガンダムのツボ>は、さらーっと原作アニメ数本を鑑賞しただけでは読み取れません。
少なくとも『パシフィック・リム』のノリでモビルスーツをまるで「重機」のように操縦しちゃったら、その時点でアウトでしょう。
……まぁサンライズさんが付いてるから……大丈夫だとは思いますが(震え声)
ともあれ、冒頭の記者発表動画を拝見する限り、今回ばかりは大いに期待が膨らみますね。
「納得できない限り次に進まない」「ファンが見たこともないガンダムを生み出したい」…なんという決意にあふれた発言でしょうか!
実写版ガンダムには<溝>が出来ないことを心から確信して、今回のエントリーを締めたいと思います。ジーク・ジオン!!