映画「怒り」の感想の前に、昭和館エッセイをもう1本お楽しみください。
私はピカレスクが性に合っているのか、歌舞伎が好きだったり、東映のヤクザ映画とか、現代ではデスノートとか、悪が主人公の作品が、観ていて安心するというか、フィット感があり、全身からアドレナリンが噴き出して、スカッとします。(実生活では、悪いことができないからなんでしょうね)
たとえば学生時代も、さわやかで非の打ちどころがなさそうなイケメンアイドルや、スターにあまり興味がありませんでしたが、その人物の醜聞が週刊誌なんかに載ると、きゅうにドキドキしたりしました。
まばゆい存在が影を帯びたことで、よりその人が立体的に見えてくるんですね。裏の顔がひどいという話を聞けば聞くほど、強く惹かれ、同じクラスの男の子たちが薄っぺらい感じに見えてしまい、虚像の醜聞スターを好きになったりしていました。
(迷惑な人には実生活では、深く関わり合いたくはないんですが)
そういう考え方の基盤は、多感な少女期に、まるで事故のように出遭ってしまった(笑)
「まむしの兄弟」という作品の影響が大きかったと思います。
レコードのA面、B面のように、お目当ての映画作品には必ずもうひとつの「裏作品」がついてくる、うれしい時代を過ごしたアラフィフ世代の私にとって、
今でも記憶に深く刻まれている衝撃のB面が、「トラック野郎・御意見無用」の裏で、菅原文太さんと川地民夫さん主演の
「まむしの兄弟・二人合わせて30犯」
という、多感な少女時代を過ごしていた私にとって、なにやらオソロシげなタイトルの作品だったんです。
主演が両作品とも、菅原文太さんということで、劇場側も、エイヤと文太さんくくりでセットにしたんでしょうが、、「トラック野郎」はどちらかというと、家族でもギリ楽しめるエロスとバイオレンスが含まれる、完全大衆娯楽作品。
しかし「まむしの兄弟」は、かなり系統がちがいます。
この作品で行われる「悪」は、シャレにならない正真正銘の犯罪で、主人公も刑務所を出たり入ったりしている、完全アウトロー作品。エロスとバイオレンスも、子どもにはチョット、刺激的すぎる内容だったのを覚えています。
道路が何回も陥没している福岡県です。なんでも詰めが甘くて雑な北九州ですから(そんなユルさが好き)(笑)このふたつをセットにしちゃったんだろうなあ。
しかしこの作品に出会ってしまったことで、私の意識は激変します。
人がよすぎて、悪い連中に利用されるアホなまむしの兄弟を爆笑しながら見て、親近感がわいてきた私は、
「犯罪者側に転がる人たちは、異世界のモンスターじゃない。私とおなじ人間なんだ」
「自分だって、きっかけがあれば犯罪者エリアに滑り込んでもおかしくないんだ」
と、理解すら示すようになり、当時流行っていた、テレビ三面記事「ウィークエンダー」も、興味しんしんに観ていました。
その後、天真爛漫に軽犯罪や犯罪を繰り返す、マヌケでキュートなまむしの兄弟の行く末が気になって、成人してからも、あらためてシリーズで観ることになりました。
私が住む北九州のレトロな映画館、小倉の「昭和館」でもシリーズで鑑賞しましたよ。
〈 リピート鑑賞 〉
昔の映画館は、一度、館内に入ると、映画上映中は、外にさえ出なければ、朝から晩までリピート鑑賞ができました。(注※昭和館は入れ替え制です)気に入った作品を、1日に5回観たりできたんです。
そんなに長い時間、映画館にいるとおなかがすくので、座席でお弁当を食べたり、家から持ってきたリンゴを、履いてるジーンズでみがいて、かじったり。
リンゴを丸ごと持ち歩いて、外で皮ごとかじるなんて、今の人はあまりやらないと思いますが、昔はリンゴといえば、そのまま持ち歩ける「お弁当」であり「おやつ」でした。「リンゴをかじると、歯茎から血が出ませんか?」なんていうキャッチフレーズの歯磨き粉がコマーシャルされているほど、リンゴ丸かじりは、みんながやってる文化だったんです。
(きれいに剥いたリンゴをかじっても、歯茎に抵抗はありませんが、丸で皮ごとかじっていたから、歯茎にキビシイわけです)。
そんなのんびりした時代を思い出させる昭和館は、今も食べ物の持ち込みがOKなのです。もちろん映画を観ながら食べることも。
<録音が娯楽だった>
私が「トラック野郎」に熱狂していた頃は、カバンのように大きなラジカセを持ち歩いて、なんでも録音して楽しんでいたんですが、デコトラにインスパイアされ、ラジカセに隙間なくスパンコールを接着し、ギラギラにデコっていたので、トラック野郎を鑑賞するときは、自慢のデコラジカセを映画館に持ち込んでいました。
もちろん、気に入ったシーンを録音して、観客席の笑い声とともに、家で聴いて楽しんだりするためですが、さすがに今それをやると、罰せられてしまいますので、自由過ぎる時代を生きていた私と同世代の方々は、要注意です(笑)
昭和40年代は、パソコンも携帯電話はもちろん普及していませんでしたが、一家に一台あるはずの黒電話(固定電話)すら、一部の家庭にしかありませんでした。
うちは小鳥屋さんだったので、電話がありましたが、お隣の人への電話がうちにかかってくるので、ブザーを押して呼んで、貸してあげたりしていました。
こちらは昭和館の、映写室へと続くらせん階段です ↓↓
〈館内で販売中のおやつたち〉
昭和館の売店では、映画を楽しむお客さんのために、映画を観ながらつまめる、おやつを販売しています。
持ち帰って楽しむドリップ式の、昭和館オリジナルブレンド珈琲も評判ですが、個人的にオススメは、お菓子類です。あまり見たことがない、知らない会社の塩キャラメルや、クッキーなど、ビジュアルが素朴で、容量少なめな気の利いたお菓子たちが、並んでいます。
あまり期待もせず、気まぐれに買って、ひとつ口にしたことがあったんですが、その美味しさに驚きました。あんまりびっくりしたんで、他のお菓子も口にしてみたところ、やっぱり味わい深く、真っ正直に作られたお菓子の深みを感じました。
それから売店にとりつかれ。。ひとつ、ふたつと口にする種類を広げてゆくと、このお菓子たちをチョイスした昭和館オーナーの、ただならぬこだわりに気がつき始めます。
ここに並んでるお菓子、もしかして全部美味しいんじゃ⁉︎
制覇しないと気が済まなくなりますよ(笑)
個人的に一番オススメは「かすが美人」というミルクマドレーヌ。一見、なんの変哲もない普通のマドレーヌですが、卵とミルクの風味が、巨大なマドレーヌに埋もれたかのように「来ます」(笑)
初めて食べたとき「ん?」と、言いながら、パッケージを二度見しました。これを知ったら、もうほかのマドレーヌは食べたくならないほど、焼き菓子好きの私にとって衝撃的だったんです。
あまり売っているのを見たことがないので、以来、昭和館を訪れたときは、5〜6個まとめ買いするようになりました。
通販もしているようです。
〈近くにあるオススメのお食事処〉
映画を楽しみ終わって、おなかペッコペコになると、いつも楽しみに寄る店があります。
田舎料理「いちべえ」さんです。
今はなき、新宿コマ劇場にあった「ふるさと」に、味の傾向が似ています。(といってもたぶんわかる人はいない?(笑))素朴な田舎料理です。
10種類くらい具が入った、おかみさんの作る「だご汁」は絶品です。
目の前で、網で焼いてくれる香ばしい「焼きおにぎり」は、焦がした味噌の香りが癖になる美味しさ。
応援したいお店です。
明日は、「怒り」の感想をUPです。
お楽しみに〜!
(明日に続く)