れらpです。
アニオタで作曲厨のLIVE演出家です。
(↑こんな絵も描いたりしますww)
前回のエントリーで
「アニオタはキモくない」
と、つい自己保身に走ってしまったのでww
今回からちゃんと文化人(?)っぽいネタを投下していこうと思います。
■″斜陽化したJ-POP″と″成長するアニソン″の違いに迫る
自他ともに認める、れらpのアニオタっぷり(´・ω・`)
ところでアニメの魅力って、作品そのものと共に「音楽」っていう要素も大いにあると思うんです。
- 作品世界にいざなう、オープニング主題歌
- エピソードの余韻に浸れる、エンディングテーマ
- 時に話中シーンを盛り上げる挿入歌
そう、″アニソン″です。
★僕の大好きな澤野弘之さん作品XFD★
澤野弘之 『BESTOF VOCAL WORKS[nZk] DIGEST』
CDが売れない、曲が流行らない…
J-POP全盛の90年代が過ぎ、2000年代も半ばに入ると音楽業界は未曽有の不況に見舞われるようになりました。
そんな時代にあっても、唯一といっていいほど右肩上がりの成長を続けたジャンル、それがアニソンです。
時を同じくして、日本のアニメ人気がついに海外で臨界点を超え、爆発的かつ世界的ブームになっていきます。
★最初に海外で高い評価を受けたkalafinaは後に日本でも爆発的にヒット★
(アニメ『アルドノア・ゼロ』主題歌「heavenly blue」)
Kalafina 『「heavenly blue」MV(Short ver.)』
今や、日本カルチャーの代名詞ともなった「アニメ」。
多くの外国人は日本アニメを見て、日本に憧れ、日本を好きになり、あまつさえ日本アニメを原語で理解しようと、日本語学習熱も桁違いに高まり…。
そして現在、訪日外国人観光客は史上最多を記録しています。
2000年代初頭から、日本のアニメを観て育った海外の方たちが、ようやく自分で日本を訪れることができる世代になった、というところでしょうか。
斜陽化していったJ-POPと同じ時代に、青天井で勢いを増していったアニソン。
なぜこの2つのジャンルがここまで明暗を分けたのか?
理由はいくつか挙げられると思いますが、大きな要因のひとつは
「感動体験共有の有無」
だったのではないかと僕は考えています。
■情報独占の崩壊が嗜好の多様化を生んだ
本来音楽とは、曲そのものを楽しむものであり、個々のリスナーはその楽曲の作り出す世界観を感じ取るなかで、自分と共感できるものを見つけ、その曲を愛してきました。
日本発の娯楽である「カラオケ」もJ-POPのヒットを後押しします。
みんなが知っている曲を自分も歌いたい、テレビをつければ流れてくるあの曲は、きっと凄い名曲なんだ…。
当然その曲を生み出すアーティストへのリスペクトも生まれます。
そして次々とミリオンセラーが生まれ、続々と大物アーティストが誕生していったと思うのです。
★90年代を代表するJ-POPユニット「globe」★
globe / 「DEPARTURES(from LIVE DVD globe the best live 1995-2002)」
ただ。
時はソーシャルコミュニケーション時代を迎えようとしていました。
すなわち、2000年代初頭は「mixi」に代表される、ネットを通じた個人対個人のつながりが始まっていた時代。
そして「ニコニコ動画」がスタートしたのも2006年。
個人で簡単に情報発信ができるようになった、産業革命以来の大変革の時代です。
すると何が起こったか。
それまでマスコミや大手レコード会社が独占していた「情報発信」というツールが、個人レベルに拡大した。
ネットという空間も「2ちゃんねる」に代表されるアンダーグラウンドなものではなく、普通の人が、何の引け目も感じる必要なく大手を振って利用できるようになった。
(その延長線上に、今のツイッター等の普及があります)
そうなったらあとはただひたすら「嗜好の細分化」が始まります。
今までテレビが歌番組でフィーチャーしていた曲、大手レコード会社が営業して、タワレコやHMVで平積みされていた曲、
すなわち、「今はこの曲が売れています」、
って曲以外にも、「コレいいな」って曲がわんさかあることに、個人が気づき始めます。
何で気付くかっていうと、個人レベルの情報交換、すなわちソーシャルメディアで気付くようになったのです。
その中でも特に活発に情報交換していたクラスタ※が
「アニオタ」だった。
(※ある特定の趣味嗜好を共有する集団を「クラスタ」という。ネット用語。)
■世界観を補強するツールとしてのアニソン
アニメは、作品そのものが「世界観」を語ってくれます。
魅力的な登場人物や物語の筋書き、もちろんアニメ特有の映像表現そのものにも大きな共感ポイントがたくさんあります。
そこに集う人たちは、
最初からその「世界観」を共有した人たち。
そしてその世界観を代表する「音コンテンツ」がすなわち「アニソン」だったわけです。
J-POPのリスナーは、基本的に最初の段階では「1人」だ。
自分でその曲を見つけ出して世界観を感じ、構築し、そのあやふやな「感性」をなんとなく共有した人たちが徐々に集まり、そのアーティストのファンというクラスタをようやく形成していく。
ところがアニソンは、最初に(作品の)世界観があって、音楽はシンプルにその世界観を補強する役割を持って登場する。
すなわち、アニソンというツールは、アニメクラスタたちの絆を再確認する手段として最初から存在し、そのアニメ作品が好きであればあるほど、
そのアニソンを彼らが″推し″ていくという構図が見えてくる。
どっちがより簡単にクラスタを形成し、
どっちがよりアクティブに売れるでしょうか!?
■アニソンは早くから感動体験の共有化を進めていた
アニオタは、伝統的に自分の好きなものには投資を惜しみません。
ほかのクラスタにはない特徴です。
(のちにアイドルオタたちがこの特徴を持つようになる)
具体例を挙げると、
たとえばそのアニメのブルーレイが出たとします。
普通は1枚買って終わりです。
でもアニオタは最低3枚買います。
- 1枚は自分が鑑賞するために。
- 2枚目は一切開封せずに永久保存するために。
- そして3枚目は「布教用」として周りの友人たちに貸し出すために。
アニソンCDにも同じ購買行動が発生します。
そして、たいていのアニメ作品は今やテレビ放映するだけで制作費を回収しようとは考えていません。
大半はテレビ局がその作品を買い付ける金額よりも、「関連グッズの売り上げ」でペイしているのです。
関連グッズとはすなわち、
CDやブルーレイ、ゲーム、キーホルダーやらフィギュアなどの各種グッズ、ファンブックなどの書籍、ファンミーティングLIVEのチケット売り上げ、などです。
とにかく、ありとあらゆるメディアミックス展開を図って初めて制作費を回収できるのです。
★代表的なメディアミックス作品「ラブライブ」★
だから、皆さん意外かもしれませんが、
AKB48なんかよりも、もっとずっと早くからアニメ業界はファンとの直接的な触れ合いを始めていたのです。
(さすがに「握手会」なんかはやってませんでしたが)
ディスクについてくる特典だって、アニメイトとゲーマーズでは違う。
違うから全部買いたくなる。
もちろんアニメクラスタはその供給に積極的に応えていく。
ファンミーティングには、アニメに出演する声優や主題歌を歌うアニソンシンガー本人が登場し、感動の名場面をその場で再現してみせる。すなわち
直接的な感動体験の共有、
世界観の再確認の場ですね。
CDリリースしておしまい、のJ-POP勢とは明らかに一線を画するきめ細かなセールスプロモーションを積極的に展開していたのが2000年代半ば以降のアニソンというジャンルなのです。
嗜好が細分化した時代において、
主要購買層のニーズに特化した販売戦略、販路拡大。
J-POPが、不特定多数に向けて、ゴールデンタイムのテレビ出演やFM局のパワープレイなどマスに向けていわば「空中戦」をやっていた時代に、
深夜しか放送枠のないアニメ(アニソン)は地道に〝口コミ″という「地上戦」で、最初から自分たちの方を向いている購買層に、対面販売のようにアピールしていた。
バブル崩壊以降、人々の可処分所得が一向に増えない日本経済のなかで、
堅調に売り上げを積み重ねていくのはどちらなのか?
火を見るよりも明らかだった。
(音楽配信が始まったりとか、もちろん他の要因も多々あるでしょうが、2010年代になって急激にメジャーアーティストたちがこぞってアニソンを歌い始めたという現象は、こうした説を補強する、注目に値する傍証となるでしょう)
★スキマスイッチ「奏(かなで)」/「一週間フレンズ」主題歌★
(ちなみにアニメの主題歌としては声優の雨宮天さんが歌唱)
■今や感動体験の共有こそが音楽の生命維持装置
賛否両論あるAKB商法は、そんな感動体験をより分かりやすく
「アイドルと直接触れ合える」
というスキームに纏めてみせた。
画面の向こうにしか存在しなかった大好きなアイドルが、CDさえ買えば自分の目の前に現れて、握手できる。
こんな「感動体験」が出来ますよ!?
と供給側から示されたユーザーたちが、そこに価値を見出して飛びついたのは必然だったといえるでしょう。
※ただし、このことが「アイドル」という存在を特別なものでなく、あまりにも普通の存在に貶めてしまった、という副作用は無視するわけにはいきません(このテーマについてはまた別の機会に譲りましょうか)。
いずれにせよ、
今や「音楽」は、少なくともマネタイズの世界においては
「楽曲そのものを提供するだけ」では、
十分な価値を供給できたとは言えなくなった。
「俺たちは音楽そのもので勝負するんだー!」
っていうメンタリティーを持ったアーティストたちよりも、
「売れるためだったら何でもしますっ!」
っていうアイドル界隈のカルチャーの方が、こうした市場ニーズの変化に即座に対応し、マネタイズの世界に適応していったわけです。
結果として、
ここ数年売れている楽曲ジャンルは、「アニソン」と「アイドル」が異常に目立つこととなった。
そしてJ-POPという専門店は、このマーケットの変化についていけず、斜陽化した。
前者が郊外の大型複合店だとしたら、後者は中心市街地の空洞化した商店街、みたいなものでしょう。
J-POPは、時代の流れについていけなかった、恐竜みたいな存在、といったら言い過ぎでしょうか。
■(まとめ)音楽LIVEは、感動体験の場でなければならない
さてさて、長々と書いてきましたが、
これが、十数年アニメとアニソン・アイドル業界をウォッチし続けてきた僕の率直な感想です。
今回の件から皆さんが得るべき教訓は。
(これ「貝木泥舟」というキャラの決めゼリフww)
「音楽LIVEもまた、感動体験の場でなければならない」
ということだと僕は思っています。
出遅れたJ-POP勢も、今やCDの売り上げよりも、LIVEでの売り上げで稼ぐ方向にシフトしてきました。
たとえば。
メディアの露出こそほとんどありませんが、安室奈美恵ちゃんのLIVEはホントに凄くて、まさに「感動体験」ができます。
当然ですが、アニソンみたいに、作品の世界観が最初にあって、LIVEでその再現をすることで「感動追体験」する、というスタイルではありません。
彼女の場合はまさに「安室奈美恵」という世界観がそこにあって、LIVEに集まるオーディエンスは、存分にその世界観をLIVEで体験しているのです。
だからいつでも満員だし、リピーターも続出する。
オリコンで上位に入らなくても、十分にマネタイズが成立しているのです。
(ももクロのLIVEも同様ですね。あの感動は、LIVE会場でしか味わえない)
僕の目指すLIVEもそれ。
アイドルだろうが、J-POPアーティストであろうが、
わざわざ会場に足を運んでくれた人たちに、
ひとときの感動体験を共有してもらうこと。
そしてその体験は、
YoutubeやCDで楽曲を聴くだけでは決して得られないもの。そして、
そんな感動体験ができるLIVE演出は、
決して素人では作れない、
と確信しているのです。
そこにはじめて「歌うだけ以外の付加価値」が生まれる。
すなわち、マネタイズが成立するのです。
計算され尽くし、盛り上げるべきところで盛り上がり、泣けるところで泣ける。
そんなLIVEは、プロフェッショナルにしか作れない。
そしてそんなLIVEを実際に演じることができるのは、プロのエンターテイナーだけだ。
素人に毛が生えたような、名前だけ「アイドル」の子には絶対に演じ切ることはできない。
てことで今、
あるユニットのLIVEプロデュースに取り掛かろうとしています。
彼女たちは果たして「感動体験」を提供することができるのか!?
今から、楽しみで仕方ありません。
ひえ~!長くなってスイマセンでした~(*ノωノ)
(追記)前回のエントリーの最後に「次はあるLIVEの話をしようかな」
と書いてしまいましたが、まったくもって違う話になっちゃいました。
やっぱり予告はしないようにしようww