『昨日より今日はもっと×2!素敵』 BLOG(イケてる大人計画)

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【鈴山キナコ★かわいいオトナ】映画「怒り」感想。自己犠牲が真実の愛だとしたら。

映画「怒り」は、私の好きな作品ベスト10に入りました。10の中には黒澤明監督「どですかでん」、デヴィッド・リンチ監督「マルホランドドライブ」も入っています。

 

もうとにかく、ズバ抜けた映像センス!
千葉の房総、東京の新宿、沖縄の孤島と、無関係な3つの場所と物語が、短い間隔で、ぶっ飛びながら交錯するんですが、映像と音の切り替わりがカッコよくて、シビレちゃいます。

 

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※100パーセント個人的感想です。ネタバレも含みますゆえ、これから鑑賞される方はご注意ください。

 

 

私はむかしむかしあるところに」説明をする親切映画が、観客を低く見ているようで苦手なんですが、「怒り」の、説明が一切ない、直感的な映像の切り取り方、投げ方、観客への信頼感がすごく好きです。

 

音にしても、ハイライトシーンのたび、音のボリュームが上がる映画が苦手で、そういう作品にDVDで出くわすと、気に食わなくて、音量をフラットに調整してしまいます。
「怒り」にはそんな小細工もなかった♫

 

3つの土地で起こる物語が、まるで

ブツ切りにされた肉の断面を突きつけられるように

バンバンバーンと目の前に転がり、、
真っ赤な血を流し続けています。
息つくヒマもありません。

どこまでも蒼い空と海が拡がる景色が、不釣り合いなほど煌めく中、犯人のどす黒い闇がこれでもかと描かれます。

 

そもそも吉田修一さん原作の映画作品は「パレード」から、シビレるほど好きでした。

ある一定以上接近したときの、他人のヌメッとした不気味さを描き切っていて、気持ち悪く、観終わったあとの気分は最悪でした。


それなのに、しばらくすると、このまえ観たあの作品、エロ作品だったっけ?というような、不思議ななまめかしさで思い返します。

 

もう一回、観てみよう。触手がのびます。(やっぱり気持ち悪かった→いや、エロだったよね?→たしかめよう→永遠ループ)

 

一体どんだけ魅力があるんだよ。
完全にとりつかれました。

 

なので「怒り」も、ポスターを見たときから期待大でした。
が、上下巻におよぶ、あの長い作品の映像化ということで、原作とはかなり違っているだろうなと思い、原作を一切読まず、映画作品として味わうことに専念しました。

 

「パレード」も「怒り」も、
犯人は誰だ!?
というミステリー小説みたいな側面が一応、用意されてはいますが、
「でもそんなの関係ねえ」とばかりに、重要シーンの箸休め的に転がしていますので、私も、真犯人探しは箸休め的に楽しみました。

 

それよりも。

 

冒頭の宮﨑あおいさん演ずる、発達障害の風俗嬢の、子どもみたいな無邪気さの合間に見せる「死んだような眼」(お父ちゃんに連れ戻される列車の中の眼)、

あれにまず、心をわしづかみにされました。

 

風俗嬢の眼だよこれ!
なんでこんな演技ができんの?

 

私自身、風俗嬢の経験はありませんが、迷走していたいつかの自分を見たような気がしました。しゃべり、行動。なんだかいろいろ似ています。そのとき風俗嬢の友達もいましたが、その子の眼を思い出しました。

 

そのあおいちゃんが好きになった、素性の知れない青年・松山ケンイチさんの眼が。
シャッター下ろしきった人生。
長期に渡り、閉ざされてきた眼。孤独な眼。
いったいなにがあったのさ?

 

ふたりが惹かれ合うの、納得です。
どうかうまくいって欲しい。
映画館の客席で手を合わせました。

 

そこまでが千葉の房総が舞台。
新宿では、ゲイのサラリーマンとして、妻夫木聡さん登場。不治の病で入院中のお母さんを見舞いつつ、いつも頭はオトコ探しで一杯。スマホで出会い系サイトをチェック。


2丁目のハッテン場らしき場所で、ひとりおびえたようにハダカで縮こまった怪しいノンケ、綾野剛さんと出会います。

 

綾野剛さんを見て、リンゼイ・アン・ホーカーさん殺害事件の犯人、市橋達也を思い出しました。市橋がゲイのふりして2丁目に逃げ込んでいたらしいという話を、聞いたことがあったからです。

 

妻夫木さんは綾野剛さんをひとめで気に入り、イヤがる綾野さんを犯します。綾野さんはその後、妻夫木さんに餌付けされ、すっかりなついて、マンションに転がりこみ、同棲生活のはじまりはじまり。

 

この出会い方、なりゆきが、私の今の旦那とのなれそめに似ていて、またまた感情移入。
物語の進行にともなって、今更ながら、自分が何者かがはっきりしてきました。

なんだか、自分を見つめ直すための作品みたい(笑)リアリティが、そうさせます。

 

私ごとですが、歳が息子みたいに下の男性を好きになると、こちらからは好きだと言えないので、よく2丁目のお店に恋愛相談に行っていました。

「そうなのよー、言えないのよねー」
「わかるわー」
ゲイのママに共感されていました。

 

マイノリティ。

 
今まで認めたくなかったけど、すんなり認められたのは、これだけの豪華キャストで見せてもらえたからに、他なりません。


キャスティングが違ったら、この作品は、
くるしいものになっていたかも知れません。

 

変わって、沖縄の孤島。突然現れた旅人、森山未來さん。見るからに怪しい松山ケンイチさんや、綾野剛さんに比べると、風変わりなヒッピー風のいでたちや、ほがらかな笑顔に、社会との関わりがギリ感じられます。


たまたま船でやって来た広瀬すずちゃんと出会い

「田中です」と、屈託なく自己紹介。

犯人探しの目では、この人は違うだろう、と感じました。

 

が。離れた島で広瀬すずちゃんに偶然出会い「田中さん?」と、呼ばれたとき、彼はすぐに返事ができませんでした。

 

ピーンときました。
怪しい!
田中ってウソなんじゃね?

読みは、当たっていました。。

 

八王子夫婦殺害事件のモンタージュ写真が公開されてから、3つの場所に現れた怪しい青年たちと、彼らを愛してしまった人たちとの間に、不協和音が生じ始めます。

森山未來さんが殺人犯なんですが、派遣社員として働く間に社会への恨みを募らせていったんじゃないかな、と思わせる人生の断面が、並びます。

 

部屋の壁にところ狭しと日記のように殴り書きする、日々の鬱憤晴らしは、、
インターネットの掲示板を想起させます。
芸能人に殺害予告する人って、こんな感じなんだろうな。実に不気味です。

 

この人が、殺人に至るまでの精神状態。本来はきまじめで、長いこと孤独で、楽しいことのひとつもなく、毎日心を踏みにじられるようなことがあって、仕事では人間扱いされてなくて、深すぎる闇を抱えてしまったのだろうな。

 

豹変したときの態度や言葉は、狂人そのもの。人間性のかけらも感じられない。
あまりに哀しい。かわいそうな人です。


殺害シーンには、少しひっかかりました。

リンゼイアンホーカーさん殺害事件は、市橋が逆上して起こった事件。
あの事件を思わせる描写が多いのに、殺害した奥さんを風呂に入れるシーンがありました。風呂に入れると生き返ると本気で思っていたというくだりも。

 

そこは、佐世保の同級生殺害事件を想起させます。サイコパスならではの行動です。

 社会への怒りをつのらせた末の、殺人として描いているはずのストーリーの中、そこだけが消化不良気味でした。

(「ヒメアノ〜ル」も映画版は、サイコパスと怨恨殺人が混同されていたのが気になりましたが。サイコパスだと、同情も感情移入もできないと考えているんでしょうか)

 

前編通しては、さまざまな怒りの感情が交錯する中で、自分を愛しながら、他人を愛することの難しさを感じました。

 

般若心教、キリスト教、さまざまな宗教で「自己犠牲」が最大の愛であると説いています。しかし、本当にそうなんでしょうか?リアルに考えてなかなかそんな境地にはたどり着けないのが、人間。

 

宮﨑あおいさんも、松山ケンイチさんを信じ切ることができませんでした。

 自分に対する、震えるほどの怒りで、歯を鳴らしながら泣く、宮﨑あおいさん。

 

妻夫木聡さんも、同様。一緒の墓に入るとまで言った仲だったのに。

街をふらふらさまよいながら、力なく泣き続ける、妻夫木さん。

綾野剛さんは、もうこの世にいません。

 

客席でさめざめと泣きました。涙が、止まりませんでした。

 

私もきっと、自己犠牲愛が足りなくて、後悔する側の人間です。

だけど自分が幸せでないと、人を愛せないのです。

 

沖縄では、愛する人を救えなかった怒り。
レイプされた怒りの出口がないことへの、怒り。

広瀬すずさんが、真っ白に続く砂浜に突っ伏し、憎らしいほど蒼い海に向かって、

言葉にならない言葉、絶叫、声をひたすら発し続けるシーン。

時間よ戻れと、願わずにいられません。

 

私は今、母が歳をとってきたので、認知症を勉強しているんですが、認知症になると人は、ものを盗られたと言ってきゅうに怒り出したりするそうです。


悪口も言い続けるのだとか。

 

人間、脳機能が低下したとき、最後まで残る
感情が「怒り」なのでしょうか。
怒りが、生きようとする力なのかもしれないと思うと、それも哀しいですね。

 

救いがないストーリーの中、唯一の光は、犯人扱いされて出て行った松山ケンイチさんが、戻ってくることになったシーン。

 

「借金がなんだ、ヤクザがどうした?ひとりで抱え込むな!」

 

ふだんは気弱なお父ちゃんが、一生懸命に電話で励ますシーンには、たまらず嗚咽をもらしました。

 

渡辺謙さんのお父ちゃん、好き過ぎます。

 

「怒り」は、映画館で見終えたあと、DVDで再度、鑑賞。

こんなに救いがない話なのに、なぜすべてが涙ぐましくも、力強く、美しいと思えるんだろう?

明日からがんばって生きて行こうと思わせる力が、作品にみなぎっているんですよ。

 

全編通しての、あまりに綺麗な、まばゆい光がさす風景、ほとんどなにも見えないほど薄暗い殺人現場の、冷え切った、憎悪に満ちたおぞましい光景。スタイリッシュな映像センスと土着的で生々しい映像のパッチワーク、キャスティング、役者さんの力。。

 

絶妙なさじ加減と計算がすべて成功したのが、この作品なんだろうなと感じました。

 

これから原作のほうも、読み始めようと思います。